まずは引いてから押す

あまりにも有名な、林先生のこの文章。不思議な迫力があるが、思考の筋としても見るべきものがある。

事実がこのメールの通りだとすれば、あなたのおっしゃるように、弟さんは統合失調症の可能性があると思います。
しかし、どうもこのメールの内容は解せないところがあります。
弟さんが統合失調症で、あなたに対して何らかの妄想を持っていると仮定しますと、ここに書かれているように、あなたの行動を監視し、いちいちそれに合わせて嫌がらせをするという手の込んだ形は、ちょっと考えにくい行動です。
しかも長い期間に渡ってあなたがそれを無視してそれなりに生活をされているというのも想像しにくいところです。
そして、「○○が自分の行動を監視し、いちいちそれに合わせて嫌がらせをする」というのは、統合失調症の方の典型的な被害妄想の訴えでもあります。
まさかとは思いますが、この「弟」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います。
【1087】家の中にストーカーがいます

いったん、投稿者の前提(弟がストーカーである)を受け止める。ここ、まずポイント。そして、その前提を受け入れた上で、「だとすると〜なはず」と論を展開し、その矛盾を指摘する。そして、別筋の説得力のある一般仮定(被害妄想→統合失調症)を持ってくる。そして、それに投稿者の状況を当てはめて仮定して見せた上で、結論を持ってくる。(実際は、この後、それ以外の可能性も指摘した上で、それでもなおこうである、と出口を閉じている)
単に否定するのではなく、相手の意見をまず受け入れるうえで感情的な反発を防ぎ、かつ理論としても一般論が入ってきているので反論しずらい。議論のお手本みたいで参考になる。