ダニエル・ピンク「ハイ・コンセプト」(三笠書房)より。

「ものに名前をつけることが問題のはじまりだ」と先生は言う。

「あなたの問題は、見たものを描いていないってことだよ」とボマイスラー先生は言った。私が描いたのは、「子供の頃から記憶している象徴的イメージ」なのだ、と。

私の唇は実際、こんなふうではない。こんな唇の人などいない。私は唇の象徴的イメージを描いたのだ。実を言うと、それは子供のころから頭に刻まれている象徴なのだ。

先生は、「絵を描くことは、おもに『関連性を見ること』です」という持説を繰り返していた。関連性が一体化したとき、全体が作り出されるのだ。