鏡のメッセージ

風呂に入っていたら思い出したので書く。

かなり前の話だが、ある女性と別れた。どちらかというと振られた。すごく人なつっこい感じの子だった。末期はひどい状態になっており、常に争いごとが絶えない状態。互いに疲れており、もはや建設的な話題ができない状況にあった。一人暮らしの私は、その頃引っ越しをしていた。新しい家で気分一新と思ったのだが、そのときちょうど別れ話を持ち出された。脊髄反射気味に了解してしまったのだが、まあよく考えれば、一時的な環境のせいもあって仲が悪くなっていたのだし、別れたことを非常に後悔した。長く付き合ったのに、最後の対面は非常に短かった。あっけないものだと思った。その後、折に触れて思い出しながらも自然と時間がたち、記憶も薄れていった。連絡も取らなかった。
ある日、風呂に入っていて、その日は珍しく換気扇をつけずに風呂に入った(寒かった)ので、出てきて洗面所の鏡が非常に曇った。また通常はコンタクトレンズを外して入るのだが、その日はつけたまま入ったこともあり、奇妙な感じだった。それで、曇った洗面所の鏡が目に入ったのだが、過去に見覚えのある柄がぼおっと浮き出てきた。やや下手くそな動物の絵。小学生レベルの花の絵。どう見ても彼女の絵。私は鏡の掃除などまずしないので、ずっと残っていたのが曇ることで浮き出てきたのだろう。引っ越したばかりに別れたので、彼女がこんなところに何かを書く時間はあっただろうかと訝しく思ったが、どう見ても彼女の絵であり字だった。「ありがとう」とそこには書いてあった。

そんなお話。書いてみるとそんなたいした話でもないな。なんか作り話っぽくなってしまうし。